恋に異例はつきもので
 一度、心を決めたら、もう気持ちがはやって、居ても立ってもいられなくなった。

 今すぐ、一秒でも早く、部長に会いたい。

 宗一郎さんとホテルの前で別れてすぐ、決意がにぶらないうちに、部長に電話をかけていた。

 あっ、でも……
 呼び出し音を聞きながら、もし今、沙織先輩と一緒過ごしていたらどうしようと思ったが、もう時遅し。
 つぎのコールを聞く前に、部長は応答した。

「辻本か。どうした?」

 ええい、なるようになれ!
「すみません、あの、話があるんですが、お会いできませんか?」

 一瞬、間があく。
「……今からか?」
 そう言われ、わたしは腕時計に目をやった。
 午後10時50分。
 うわ、わたしったら、こんな時間に。
 非常識にも程がある。

「す、すみません。遅すぎました。また改めます」
 そう言って慌てて切ろうとした。
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