コンチェルトⅡ ~沙織の章

「ママ。ちょっと 手を出して。」

と紀之に言われ 沙織は 手を広げる。

樹の目の前で 紀之は 自分の手と 沙織の手を 合わせる。


「ママの手 パパの手よりも ずっと小さいでしょう。だからパパは ママを守るんだよ。手が小さいと お菓子も 少ししか 持てないでしょう。」

と紀之は 樹に言った。
 

「タッ君の手 もっと小さいよ。」

と言って 樹は 掌を 紀之の手に 合わせる。
 

「そうだね。パパやママより ずっと小さいね。だから パパとママは タッ君のこと いつも守っているんだよ。」

紀之は 樹を抱き上げて 優しく話す。
 

沙織は 樹が どう理解したのか その時は 疑問だった。


でも樹は 自分よりも 小さい子に 

一層 優しく 接するようになった。
 

翔だけでなく 幼稚園や幼児教室で。


そして 智之の子供達にも。


みんなが 樹を好きになり 樹のそばを離れない。


それが 人徳だと 紀之は 樹に教えていた。
 








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