コンチェルトⅡ ~沙織の章

樹が 年長になる頃から 紀之は 後継者としての仕事を 担い始める。


時々、お父様と一緒に 接待の席にも 顔を出した。
 


「これでも 昔よりは ずっと 少なくなったのよ。」


そんな夜 お母様は 沙織と子供達を 外食に 連れ出してくれる。
 

「お父さん達だって 美味しい物 食べているんだから。」

と言って。


時々 智之達にも 声をかける。

父親がいない夜の 寂しさを 子供達に 感じさせないために。
 


遅く帰って 紀之は 子供達の 寝顔を見る。
 

「今日はね。智之さん達も合流して お鮨を頂いたの。」

と沙織が話すと、
 
「えー、いいな。俺も そっちの方が 良かったよ。」

お酒が 嫌いな紀之は 膨れた顔をする。


紀之は お母様と沙織が 仲良くしていることを とても喜んでいた。

家を空けることに 不安がないから。
 

「紀之さんも 美味しい物 たくさん頂いたんでしょう?」

沙織が 笑顔で聞くと、
 

「全然だよ。気を使って 食べられなかったし。よし、明日は みんなで お肉を食べに行こう。リベンジだ。」

と笑う。


会食は 金曜日が 多いから。


翌日は 必ず どこかへ 連れ出してくれる。


沙織への お詫びのように。
 

「わあ。いいね。私、太っちゃう。」


沙織は 明るく答える。

紀之の気持ちが 嬉しくて。



こんなに 家族思いの 父親だから 樹も翔も 素直に育つ。


お父様とお母様も 全力で サポートしてくれるから。
 
 









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