コンチェルトⅡ ~沙織の章

翌日 お父様は 樹の入学納入金を 全額 支払いしてくれた。

大きな金額なのに。
 

「入学のお祝いだよ。」

と嬉しそうに 微笑むお父様。


沙織も 準備していたことを話すと
 

「いいのよ。お父さんが そうしたいんだから。」

とお母様は 温かく言う。
 

紀之の給与は 他の社員達と 同じ規定で頂いていた。


同年代の 収入としては 特別 多い方ではない。


だから お父様は毎月 十分な金額を 援助してくれる。


同居してからは 紀之達が住んでいた マンションの家賃も お父様は 紀之の口座に 振込んでくれた。
 

「私達 こんなに お金いらないです。」

同居してすぐに 沙織は お父様に言ったことがある。


お父様は 楽しそうに笑い 
 

「あって困るものじゃ ないんだから。貰っておきなさいよ。お父さんは あなた達より お金持っているんだから。」

とお母様は 言う。
 

「でも私達 生活費も 入れていないのに。」

と沙織が言うと、
 

「沙織ちゃん 欲しい物があったら 私達に 遠慮しないで 買っていいのよ。」

お母様は 優しく笑った。
 

「やめてよ、お母さん。沙織 元銀行員のくせに 丼勘定なんだから。」

紀之は そう言って 沙織の顔を見る。


お父様とお母様は 楽しそうに 声を上げて笑った。


そしてお父様は、
 

「紀之が いっぱい稼ぐから 大丈夫だよ。」

と言い、紀之は ギョッとした顔をする。
 


そんな時間は 楽しくて。


沙織を 安心させてくれる。



お金の話しなのに 沙織に 何も心配させない。
 
 










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