コンチェルトⅡ ~沙織の章

小学校に 通い始めた樹は 日々 成長していく。


翔も 樹と同じように 受験に備えていく。
 

「翔君は、お兄ちゃんよりも 繊細ですね。細やかな気配りは お見事です。ただ 傷つきやすいので 家でも たくさん褒めてあげて下さい。」


幼児教室の先生に 言われて 沙織は大きく頷く。


沙織も 同じように 感じていたから。


大勢の 子供の中でも ちゃんと 翔の個性を 把握している先生に 沙織は 感心し感謝していた。
 

「翔は 智之タイプなんだよ。」

沙織が 紀之に話すと 紀之は そう言って笑った。
 

「ああ、そうね。智之さんは 繊細よね。」

沙織は 答える。
 

「俺は どうせ 大雑把ですよ。」

と紀之は言って 沙織を睨んだ。


沙織は 思わず 吹き出してしまう。
 

「いいのよ。私も 大雑把だから。」

と沙織が言うと 
 

「もっともだ。」

と紀之は言い 二人で笑ってしまう。
 

「私ね、お母様と一緒にいて 本当に 良かったと思っているの。お母様は 紀之さんと智之さんをちゃんと 育てているじゃない。すごく心強いわ。」

と沙織が言うと 紀之は温かい目で 沙織を見て
 
「ありがとう。」

と言った。


いつも紀之は 沙織の努力を 認めてくれる。


こんなに 恵まれていて 努力して 当たり前なのに。


家族の愛が 沙織を 優しく輝かせ 

さらに 沙織は 家族思いになっていく。
 

お父様とお母様も 紀之も 智之と麻有子も いつも 沙織に感謝していた。


沙織の 優しさが 家族の輪の 中心だと思っていたから。


そんな家族の中で 育つ樹と翔は 


思いやりと 感謝する心を 自然と身に付けていった。
 
 












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