コンチェルトⅡ ~沙織の章

医師に なりたいと思っても 

経済的に 諦める子も 多いだろう。


ただ成績が良いだけでは 医師になることはできない。


医学部は 授業料も高い。

卒業してからも 一人前になるまでは 長い時間が かかるから。


それを支える 経済力がないと 子供を 医師にすることは難しい。
 

もし翔が 夢半ばで挫折しても 廣澤工業に 受け入れることができる。


だから翔には 気が済むまで 挑戦させてあげられる。
 

「紀之。自分の子供が 医師になるって どんな気分?」

お母様に 笑いながら聞かれて 紀之は 照れた顔をする。
 

「まだ なってないから。でも なったら凄いよね。俺の格が 上がるよ。」

紀之が 嬉しそうに言うと
 
「お前 智之が 就職した時も そんな事 言っていたよな。」

とお父様が笑う。
 

「違うよ。お父さんだろう。智之が 一流企業に就職して 紀之も 箔が付くって 言ったんだよ。全く 失礼な親だよ。」

紀之は言い みんなで 笑ってしまう。
 

「紀之さんの 人徳よ。」

沙織が言うと
 
「それ、褒めてないよね。本当に 失礼な家族だなあ。」

と紀之は 満足そうに笑った。
 

紀之の 大らかな包容力が まわりを 優秀に育てる。


そして 全てが 紀之に返ってくる。


沙織は そんな紀之の 素晴らしさを 知っている。
 

「ううん。尊敬しているわ。」

少し照れながら 沙織は言う。


「何だよ 急に。やめてよ。気味悪いな。」

紀之は 沙織以上に 照れてしまう。


お父様とお母様は 嬉しそうに笑って 二人を見ていた。
 

「紀之も 照れてばかりいないで 少しは 沙織ちゃんに のろ気てみなさいよ。智之に 教えてもらった方がいいわ。」

お母様に笑われて
 

「駄目だ。沙織、もう寝るよ。」

と逃げるように 2階に上がる紀之。



お父様とお母様は 笑い声を上げて 紀之を見送る。
 
 










< 90 / 95 >

この作品をシェア

pagetop