捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
奏士さんと結婚しても、宮成商事での仕事は続けるつもりだ。奏士さんもそれでいいと言ってくれている。私はまだ自分を磨き、突き詰めていく最中で、仕事はその大事な手段となっていた。

「私と由朗くんのことだって、あんなに強くご両親に訴えてくれるとは思わなかった」
「力になるって約束したじゃない」

先日、由朗は沙織さんとの交際を両親に打ち明けた。その時、私は同席し、ふたりの仲を認めてくれるよう言葉を尽くして嘆願したのだ。

「でも、私が訴えるまでもなかったね」

両親はあっさり由朗と沙織さんの交際を認めた。ひそかに由朗の見合いの相手を選定していたようだったけれど、相手が沙織さんならと祝福してくれた。

「好きな人と一緒になるのが一番いいって、きっと父も母もわかったんだわ。私の件で」

それに沙織さんは奏士さんの部下で、お父さんの門司弁護士は私の離婚に尽力してくれた人だ。さらには由朗が体調を崩していたとき、献身的に支えたことも知り、反対する理由がなくなったのだと思う。

「由朗はだいぶ丈夫になったけれど、無茶すると体調を崩しやすいの。沙織さんがこれからは頑張り過ぎないように見張っていてね」
「ええ、もちろん。里花さんも奏士社長のことを……と言いたいところですけど、里花さんがいるだけで社長はご機嫌だからなあ」

私は笑った。それはとても光栄な評だ。

「御機嫌かつ絶好調で仕事をしてもらえるよう、努力するわ。妻として」

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