捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
「門司です。この度は微力ですがお手伝いさせていただきたく存じます」
「お力添え感謝します」

門司さんはすらっと背筋の伸びた五十代後半といった男性で、白髪交じりの髪をぴしっと撫でつけクールな雰囲気の男前だ。功輔さんはお父さん似なのだとわかる。

「まずご報告です。本日、三栖奏士社長のオフィスに郷地京太氏と弁護士がお越しになりました」

驚いて言葉が出なかった。
なぜ、奏士さんのオフィスに? 私が尋ねる前に門司さんが言う。

「三栖奏士社長と里花さんの不貞行為に対し慰謝料を請求するとのことです」
「不貞行為……私が奏士さんと不倫をしていたというのですか?」

不貞行為なんてあり得ない。奏士さんは私の立場を気遣い、いつだって沙織さんと功輔さんを同席させていたのだ。プロポーズだって、私の離婚が成立してからと言ってくれているのに。

「ご安心ください。これは圧倒的に不利な立場の郷地家の苦肉の策です」

門司さんが言い、後ろに控えていた沙織さんが口を挟む。

「うちの社長の動向にやましいところはありません。オフィスやパーティー会場、自宅などすべて監視カメラがありますので、社長と里花さんがふたりきりで会っていないという証拠が提出できます。いつだって、私と功輔が一緒だったじゃありませんか」
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