捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
「なんにせよ、まずは離婚を成立させないといけないから」
「そうだな。奏士くんの厚情は嬉しいが、三栖本家に迷惑をかけるわけにもいかない」

父の言葉に頷く。
私はより慎重にならなければならないだろう。奏士さんだけでなく、三栖本家にも迷惑がかかるようなことはあってはならない。
ともかく、家族と囲む久しぶりの朝食は私の心を落ち着けてくれた。ごはんが美味しいという感覚は、あの日奏士さんと沙織さんと功輔さんと朝食を取った以来だった。


実家に帰ってきた翌日は、私は母と庭いじりをして過ごした。暑い夏の日差しの中、草むしりをし、草木に水をあげる。
母と過ごしていると子どもに戻ったような心地だった。ホースで水をまけば、緑はあざやかにきらめき、小さな虹がかかった。子どもの頃から慣れ親しんだ庭が、私の心を癒してくれる。母手製のレモネードは安心する味だ。

夕刻、沙織さんと一緒に弁護士の門司さんがやってきた。

「里花さん、すごく元気そう」

沙織さんは会うなり、私の顔を覗き込んで言う。私も笑って答えた。

「庭にいたんです。日焼けしてしまってないかしら」
「会ったときの里花さん、青白い顔をしていたから、今の方がいいわ。確かに少し日焼けで赤くなってるけど」

私は楽しくなって、沙織さんとお父様の門司さんにレモネードを準備した。そうしてる間に早く帰ってきた父と由朗も揃った。リビングであらためて挨拶をする。
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