不条理なわたしたち
「綺麗……」

昨日まではいっぱいいっぱいで気付かなかった。
凄い景色だ。

蓮水さんは毎日こんな夜景を観てるんだ。

「なんて贅沢……」

そう呟いたとき、私を包んだベルガモットの香りに鼓動が跳ねた。

「真っ暗な部屋で何してるの?」

耳元に囁いた低い声に肩がビクッと跳ねた。

「お、おかえりなさいっ。夜景が凄いなって」

「ただいま。毎日観てたらなんでもなくなるよ」

なんと贅沢な台詞だろうか。

「もうお風呂に入ったんだね」

シャンプーの香りで気付いたようだ。
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