不条理なわたしたち
「高級そうな良い匂いねー」

それ以上は深堀りされなくて、再びこっそり息を吐いた。

職場も心臓に悪い。




仕事を終え、蓮水さんの家に帰る。
電車は三駅しか乗っていないし、駅からマンションは数分の距離だから十九時には家に着いた。
ご飯は帰ってきた時にコンシェルジュから受け取った。
ご飯は今日は一食分だった。
蓮水さんは遅いようで注文しなかったようだ。
洗濯はやってあったし、部屋も掃除がしてあるようでピカピカだ。
ご飯を食べたら、やることが無い。
もうお風呂に先に入ろうかな。




「うわぁ!」

お風呂を出たら気付いた。
ケチって消していったリビングの電気。
真っ暗な部屋の奥、一面張りのガラスの窓から入り込む月明かりに。
目下には散らばった沢山の電気の灯り。
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