不条理なわたしたち
でもあのバーには二度と行けないし、行かない。

だって隼斗君に紹介された場所だから。

それに昨日こともある。

蓮水さんにとっては絶対に遊びだ。

蓮水さんが私に本気なわけがない。

私をもし以前から好きだったとしたら、押し倒す前に言うこともあるし、連絡先だって先に聞いておかない?

昨日私を慰めてくれた時も簡単に触れてきたくらいだ。

女性にも慣れているし、キスも上手かった。

身体も引き締まってて、彫刻みたいだった。

あの美しい容姿を使って、沢山の女性を落としてきたに違いない。

だって好きだと言われたわけでもないし、彼が言った言葉は『流されて』。

連絡先を書いたのはきっと気まぐれだ。

私を簡単に抱けたから、暇な時にでも相手にしようくらいにしか考えていない。

それに住む世界が違いすぎる。

私は北海道から出てきた狭いワンルームに住む平凡な事務員。

一夜を共にしたのに、私は彼の名前すら知らないのだから。
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