不条理なわたしたち
自分の荷物を探すと、すぐに大きなソファの端にそれらを見つけた。

鞄の中のお財布を確認した。
お金は減っていなかった。
昨日のバーのお金は蓮水さんが払ったようだ。

鞄からボールペンを取ると、手に持っていた先程のメモの空白に書き込んだ。


『ご迷惑をお掛けしました。 松岡葵』


財布から一万円札を抜き取るとそれらを大きなテーブルに置いた。

昨日化粧を落とさず、泣き続けた。
絶対に今酷い顔になっているだろうが、一刻も早く此所から立ち去ろうと、蓮水さんの家を出た。


外の明るい日差しが私を出迎えたが、そのせいで頭痛が強くなり、堪えながら歩いて考える。

今の家を引っ越そうかな。

隼斗君に二度と会いたくないから。

携帯も変えよう。

彼の部屋の合鍵は手紙で送り付けよう。

彼が勧めた髪色も、もう元に戻そう。

家にある隼斗君からの贈り物も全部捨てよう。

あのバーのマスターには謝りたい。

昨日、物凄い醜態を見せてしまったから。
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