不条理なわたしたち
ふと気になった。
蓮水さんは昨日から私に財布を出させないし、高層マンションのこんな大きな家に住んでいるし、コンシェルジュに食事をお願いしてしまうほどだ。
何をしているのか疑問を抱かない人はいないだろう。

「ただの会社員だよ」

いつもの余裕そうな微笑を浮かべながら出てきた返答に少し眉が寄る。

「こんな凄い部屋に住んでいるのに?」

ただの会社員なはずが無い。
私は疑いの眼差しを向ける。

「ただ親がしっかり仕事をしていて、おこぼれをもらってるだけ」

そうなの、かな。
海外に住んでいるくらいのご両親らしいし、そうなのかもしれない。
でも違ったとしても、蓮水さんは話す気は無いだろう。
話す気があるなら嘘をつかないだろうから。

「葵ちゃん、アパートなんだけどさ、解約してよ」

「し、しません……」

「でも俺は君を二度とあの家に帰す気は無いよ?」

「私は貴方に納得してもらうために来ました……」
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