不条理なわたしたち
「美味しい!」
「良かった」
未知の料理はとにかく美味しい。
蓮水さんと居ると舌が肥えそうで、離れた時を思うと怖いな。
「箸でフレンチなんて、おかしいですよね」
「そんなことないよ。家なんだしリラックスして食べて」
フレンチなんてお洒落な料理を食べ慣れていないので、恐れ多いが「箸で食べても良いですか?」と訊いたら、蓮水さんは私に合わせて一緒に箸で食べてくれている。
しかも蓮水さんの所作が物凄く美しい。
背筋がピシッとお手本のように伸びていて、私も自然と背筋が伸びた。
ただ食べている姿に見入っていた自分に気付くと軽く頭を振った。
「蓮水さん、お酒飲んで良いですからね」
気持ちを切り替えようと蓮水さんに言った。
「大丈夫。それにさっきも言ったけど葵ちゃんに合わせたいから」
「でもあのワインセラーとかあるのに勿体無く感じちゃいます」