不条理なわたしたち
私が訊いたのはダイニングテーブルの横にワインセラーがあるから。
バーにも行っているし、相当お酒が好きなのだろう。

「腐る物じゃないし、落ち着いたら一緒に楽しもう」

「……」

未来の話をされて黙ってしまう私は卑怯だと思う。

「葵ちゃん、明日は仕事だよね?」

そして話を逸らしてくれたらホッとしてしまう。
自分で言うのもなんだが、こんな私の何が良いのかさっぱり分からない。

「はい、明日は会社です。蓮水さんもですよね?」

「うん。朝送っていくよ。帰りも迎えに行く」

拒否することを許さないとでも言うような笑顔を向けられている。
私が帰ってこないと思っているのだろう。

「……家もバレましたし、此所に必ず帰ってきますから」

「分かったよ」
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