私の王子様は会社の社長 ~突然私は婚約者になってしまった~
パーティー会場に到着すると、そこは私には場違な華やかな場所だった。
恐らく、会社の代表や地位のある男性達と、奥様やパートナーがドレスアップしていた。
ドラマなどで見るパーティー会場のようだった。
セレブという言葉はこのような人達を言うのだろう。
如月社長は私に小声で囁いた。
恐らく私が緊張していることに気づいてくれたようだ。
「桜井さん、僕の傍を離れないでね。堂々としていれば大丈夫だよ。」
社長は私を落ち着かせるために、言ってくれたのは有り難いが、そもそも社長の隣にいるだけで、大変な緊張状態だ。
「如月社長!君がパートナーを連れてくるとは、珍しいね。」
そう言いながら近づいてくる男性がいる。
(…この人、どこかで見たことがある…たしかビジネス雑誌で話題のIT社長?…)
如月社長は一瞬、顔を顰めたが、すぐに笑顔で返した。
「東条社長、そちらの素敵なレディーは噂の彼女さんですか?マスコミで大騒ぎでしたよね。」
そんなやり取りを聞きながら、私はどんな顔をして良いのか分からず戸惑っていると、今度は美しい女性が近づいて来た。
その女性は如月社長の目の前に立ち、社長のネクタイを直すように触りながら話し始めた。
「徹さん、お久しぶりですね。今日は私の誘いを断ってその女性をお連れになるなんて、酷いですわね…」
「麗香さん、僕はあなたとの婚約はお断りしたはずです。僕に気安く触らないでください。彼女も気にしますから。」
麗香と呼ばれた女性は、私を頭の先から足元まで見回すと、恐い顔で睨んでいる。
「私を断るためにその女性をお連れになるなんて、その女性も可哀そうね!」
「麗香さん、陽菜は僕の大切な女性です。僕は彼女と婚約する予定なんです。」
(-----------------っな!な!なに!--------------)
如月社長は、その女性の前で私の頬にキスをした!
(-------------っえ!!---------------------)
その麗香と呼ばれた女性は、その場でプルプルと震えている。
しかもその表情は、背筋が凍るほど怒りが表れている。