奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~
梨音の話を聞いた奈美は、慎重に口を開いた。
「……それはチョッと、気をつけた方がいいかも」
経験者だけあって、梨音の不安も感じとってくれている。
「はい」
「お店も立ち仕事だから、辛かったら休みなよ。私だって、ももを保育園に預けたら働けるし」
梨音の体調が一番だという奈美の言葉はありがたかった。
「奈美さんありがとう」
ふたりが信号を渡って店の方へと歩き出したところで、奈美が離れた場所に視線を移した。
「あれ?」
「どうかした?」
どうやら見慣れない立派な車が目についたようだ。
「梨音ちゃん、あそこに停まってる車、見て! この辺りでみたこともない黒塗りの高級車だよ」
「あ……」
梨音には見覚えがあった。
奏が乗っていた会社の車と同じだと思ったら、助手席に座っている男性の横顔が見えた。
彼は、確か奏の秘書の守屋だ。
「奈美さん! 私……」
キュッと心臓が縮んだ気がしたとたん、梨音の身体はグラリと揺れた。
「どうしたの、梨音ちゃん!」
奈美が買い物袋を放り投げて、梨音を支えてくれた。