凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
「新川さんはいつからここに?」

「ついさっきです。NAL925、椎名さんのフライト便に乗っていました」

 椎名さんが驚いたように目を丸くして私を見下ろす。

 私は百六十センチあるし、五センチほどのヒールも履いている。それなのにまだ彼の顔は上の方にある。本当に背が高い。

「ちょうど右翼が見える席だったから、落雷があった瞬間を目撃しました」

「驚いただろう」

「そうですね。ちょっと怖かったです。でもすぐに椎名さんのアナウンスがあって、それを聞いて安心しました」

 今思い出してもカッコよかったなあと、無意識に「ふふふ」と笑い声が漏れていた。

「椎名さんはステイで明日もフライトですよね?」

 彼の手にあるものに目線を送ると、それに気づいた椎名さんが「ああ」とグラスを傾ける。

「ノンアルコールのシャンパンだよ。今日くらいはのんびり過ごそうと思ってね」

 今日くらいは、というのは言葉通りで、椎名さんは勤勉でも知られている。
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