凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
 生温い風が微かに吹く中、機体は大きな揺れもなくゆっくりと滑走路に下りてくる。まるで風に乗って泳いでいる大きな白い鳥だ。

 辺りに轟くエンジン音が徐々に大きくなっていく。

 タイヤが地面と接触した。いつもと変わらないスムーズな動きで、バウンドすら一度もしなかった。

「カッコよすぎるだろ……」

 紺野さんが、ようやく聞き取れるくらいの声量でボーイング787の帰還を褒めたたえる。

 エンジン部分さえ見なければ重大な事故が起きているとはわからないだろう。

 それくらい美しいランディングで、辺り一面から盛大な拍手と歓声が沸き起こった。

 感動して胸がいっぱいになる。すごいよ、虹輝さん。

「火災も鎮火しているみたいだな」

 紺野さんの言葉を受けてエンジン部分を注視する。煙はもくもくと上がって視界を遮っていくけれど、赤く燃える炎は目視できない。

 ゆっくりと動くジャンボ機はやがて滑走路で停止した。すぐに放水作業が始まったが、念のためという感じにすら見える。
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