凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
「虹輝さんと、姉と父を出迎えることになるなんて、人生なにがあるかわかりませんね」

 ふう、と少し疲れた様子の菜乃が息をついてゲートを眺めた。

 菜乃の父親と姉がどうしても俺に挨拶をしたいと言ったのが先月末で、ようやくそれが実現されようとしている。

 今日という日が無事に終わらなければ入籍できない。菜乃は構わず婚姻届けを出そうと提案してきたのだが、そんな真似できるはずがない。

 菜乃の父親に認めてもらわなければ、彼女の背景にある家族問題も永遠に解決しないはずだから。

 九月二十六日、日曜日の昼下がり。天候は晴れ。

 朝晩の気温が下がるようになり、秋の気配を感じるようになった。

 菜乃は茶色のサテン生地ワンピースにヒールのない靴を合わせ、俺が贈ったネックレスをつけてくれている。空調が効いている空港内が肌寒いので、アイボリーのカーディガンを羽織っているのが可憐な雰囲気があり結構好きだ。

 茶色が秋らしいと褒めたら、テラコッタという色なのだと説明を受けた。よくわからないが、菜乃が着たらなんでも可愛い。

 俺は一応結婚の挨拶になるからと、白地のシャツにネイビーのスラックスとジャケットを合わせた。

 この時期いつも半袖でいるので少し暑く、胸元のシャツを摘んでパタパタと風を起こして涼む。
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