凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
 一階に到着して母親にベールを下ろしてもらう。

「お母さんありがとう」

「菜乃、すごく綺麗」

 早くも瞳に涙を滲ませている母親の顔を見たらもらい泣きしそうだった。

 再び父と腕を組み、虹輝さんの元へ向かう。

 カーペットは空を思わせる深い青色。歩きながら皆に視線を巡らす。なかには涙してハンカチを目元にあてている同僚もいた。

 グランドスタッフは決して楽な仕事ではない。辛い時期も楽しい時間も共にした大切な仲間たち。

 最前列には大好きな姉が、涙で顔をぐちゃぐちゃにして何度も小さくうなずいている。その背中に優しく手を添えているのは、慣れない飛行機に乗り沖縄から来てくれた祖母の姿。

 ダメだ。綺麗な顔のままで皆の前に立ちたいのに涙腺が崩壊しそう。

 目の前が涙の膜でぼやけ、祭壇の奥で挙式に華を添えるクリスマスツリーのイルミネーションが霞んで見える。

 大事な人たちに見守られて大好きな人のそばに立つ。

「虹輝くん、菜乃をよろしくお願いします」

 父親が頭を下げ、娘の私を夫である虹輝さんへと託す。

「はい。菜乃さんを一生かけて守り、幸せにします」

 緊張感に包まれたこの場で、サラリとそんな台詞を返す虹輝さんはやっぱり肝が据わっていて頼りがいがある。

 私のいいところだけじゃなくダメなところも丸ごと受け止め、共に成長しようと言ってくれる彼となら幸せになる未来しかない。
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