凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
 その経緯もあり、姉のようになりたいと大学デビューを果たした十九歳の頃。

 努力して、人と普通にコミュニケーションを取るようになって、恋人もできた。

 しかし過去の記憶が邪魔をして『自分でいいのか。自分といて楽しいのか』と思う気持ちが強くあり続けていて。

『彼を他の女性に奪われるのではないか?』と疑心暗鬼になり、彼と仲のいい女性を見て、『女性は彼が好きなのではないか?』という不安を取り除きたくなり、彼の行動を制限し束縛してしまった。

 子供の頃の自分は嫌いだけれど、大学時代の自分も好きではない。

 今が一番いい。私の人生は充実していると自信を持って言える。

「昨日は菜乃もすぐに寝たの?」

 互いに無言で食べ進めていたら、不意に一番されたくない質問をされてピタリと動きを止めた。

「どうした? もしかして私のいびきがうるさくて眠れなかった?」

 すまなそうにする姉にそうではないと首を横に振る。

「実はあの後……」

 それから昨晩あったことを包み隠さず話すと、姉は目をらんらんとさせて前のめりになる。

「椎名さん、菜乃が好きなんじゃないの?」

「ないない! それは絶対にない!」

 椎名さんだよ? あんな素敵な男性が私を好きになるなんてあり得ない。
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