~狂恋~夫は妻を囲う
「はぁーどこの世界に、ヤクザの組長にパシリさせる奴がいるんだよ……!」
ひとしきりキスをした魁聖に解放された彩羽。
今は三人でソファに座り、洋武が買ってきたパンを食べている。

「ここにいる」
「洋武くん、ごめんね…」
「彩羽が謝ることじゃねぇよ。どうせ魁聖が駄々こねたかなんかだろ?」
「いろちゃんが悪いんだよ?」
「え!?わ、私…!?」

「寝顔可愛いし、寝言で“魁聖好き”とか言うし、俺にすり寄ってくるし……
愛しいいろちゃんが、腕の中でそんなことされたら我慢できないに決まってる!」
「え……」
彩羽と洋武がフリーズする。
当然のことのように彩羽のせいにする魁聖。

「魁聖…それ、不可抗力だろ……?」
洋武が飽きれ顔で言ったのだった。

「じゃあ、いろちゃん。
行ってくるね!あ、一人で出ちゃダメだよ!
なんかあったら、連絡ちょうだい!」
玄関前でもやっぱりキスをして、うしろ髪ひかれるように出ていったのだ。
「うん、わかってる。行ってらっしゃい!
洋武くんも、ありがとう!」
「うん、じゃあね!彩羽」
彩羽の頭をポンポンと撫でて、洋武も出ていったのだった。

魁聖と洋武、二人でエレベーターを下りている。
「洋武、まだ諦めてないの?彩羽のこと。
お前さぁ、姉貴の旦那だよな?」
「諦めてはないな。でも、二人の邪魔するつもりねぇよ」
「ふーん。まぁ洋武は賢いし、間違わないから信じるけど。彩羽は俺のモノなんだからな!
俺を裏切るなよ、組長さん?」
「……相変わらず死神みたいだな、魁聖…怖っ……
まだ命は惜しいし、そんなバカじゃねぇよ!」
魁聖の恐ろしい雰囲気に、身震いする洋武だった。
< 3 / 53 >

この作品をシェア

pagetop