~狂恋~夫は妻を囲う
風呂場に移動して、身体を洗い合って浴槽に浸かっている二人。
魁聖の膝の上に、向かい合って跨がっている。

彩羽は感情のない人形のように、目が据わっていた。
「いろちゃん、どうしたの?」
「このまま、抱いて?」
「ここで?」
「ここで。
できるでしょ?私のお願い聞いて?」
「………いいよ。
でも、なんでそんなこと言いだしたのか教えて?」
「どうして?」
「うーん。明らかにいろちゃんの様子がおかしいから。いつもなら、こんなこと言わない!
何かあったとしか思えない。
しかも、とっても辛いことが…!
教えてくれたら、いくらでも抱いてあげるよ?
いろちゃんがいいって言うなら、失神するくらいに愛してあげる」

「魁聖は、私のこと“俺のモノ”って言うじゃない?」
「うん!いろちゃんは俺のモノ!」
「てことは、魁聖も“私のモノ”?」
「もちろん!」
「魁聖…こんな時間までどこに行ってた?」
「え?」
「当ててあげようか?
理恵さんってママさんのクラブでしょ?」
「なんでわかったの?」
「理恵さんと何してたの?」
「酒飲んで、話をしただけだよ!」
「嘘!!」
「嘘じゃないよ!」
「じゃあなんで!!」
「ん?」

「香水の匂いがはっきり移ってるの!!?」
彩羽の訴えに、バシャッとお湯が跳ねた。

「………ずっと、横にぴったりくっつかれてたからかな…?そんなに匂ってた?」
「煙草の匂いに混じって匂ってた!!」
「そっか。ごめんね!」

「魁聖が私を束縛するなら、不安にさせないで!
魁聖が私を依存させたんだから、責任もって私だけを見てて!
もう、クラブなんかに行かないで!!」
彩羽は涙が溢れさせながら、思いをぶちまけるように魁聖にぶつけた。
< 35 / 53 >

この作品をシェア

pagetop