白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 現王アイカラスの亡き弟の末息子であるウィルバー・スワンレイクとラーウスの(いにしえ)民族であるローザベル・ノーザンクロスの婚姻もまた、(ふる)きものと新しきものの融合として、初代国王によって決定されたもののひとつだ。
 建国して一年も経たないうちに婚約は整えられ、当時十歳に満たなかったふたりの齢が十八になった春、慎ましくも立派な結婚式が執り行われた。
 互いの意志が尊重されることもない、王族と古民族の利潤だけが優先された紛れもない政略結婚。
 それでもウィルバーはローザベルを妻にすることができて幸せだったのだ。
 たとえ――灰色の白鳥が夜空の星を湖へ突き落とした、なんて揶揄されることがあっても。

 参列者たちは結婚式の場に現れたミステリアスな黒髪翠眼の花嫁の姿に驚き、夜空の星と評し賞賛した。美しい姫君は、王族の恥さらしと疎まれていた王弟の末息子への輿入れだというのに、恥じることもなく、終始凛と佇んでいた。
 アルヴス式の挙式だったため純白のウェディングドレスを纏っていたローザベルは、夫となったウィルバーに乞われるがまま、花びら舞い散る初夜の床で純潔を捧げ、夫婦となる。
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