白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
ウィルバーと異母兄ゴドウィンと白鳥座の娘

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「……客人、だと?」
「ウィルバーさまがお留守にしている間にいらしたのですが……」

 王城の東の塔に寄り道してオリヴィアから二種類の薬と香油を持って帰ってきたウィルバーは、花の離宮の門前で迎えてくれた憲兵団の副団長マイケル・コルブスから報告を受けていた。
 どうやらウィルバーが戻ってくるほんの少し前に訪れたのだという。主人が留守にしていることを告げると、彼はそうではない、この花の離宮に囚われている姫君に会いたいのだと訴え、憲兵たちの制止を厭わずずかずかと入り込んでいったという。無理に追い返せないのは、彼の身分が憲兵たちより格上だからだろう。

「……怪盗アプリコット・ムーンは」
「ウィルバーさまの寝室に閉じ込めたままです。眠っている彼女を無理に起こすことはないと、いまも応接室で紅茶を召し上がっております」

 その言葉で、ああやっぱり来たかとウィルバーは項垂れる。
 マイケルに薬の入った鞄を預け、応接室の扉をノックせずに開ければ、芳醇な紅茶の香りが漂う応接室で、優雅にカップを傾けている長身の男がいる。

「おかえり、我が異母弟(おとうと)よ」
「――ゴドウィンさま」
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