白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
「そうしたら、何?」
「うわっ!」
独り言を遮って登場した声変わり前の少年の姿を確認したウィルバーは、腰を抜かさんばかりに驚き、声を荒げる。
「……皇太孫、ダドリーさま」
「ずいぶん女々しいことをしているんだね、憲兵団長のお兄ちゃん」
くすくす笑いながら、扉の向こうでウィルバーを眺めるダドリーは、パリッとしたブラウスに濃紺のショートパンツというシンプルな装いで、憲兵服のまま塔の一室に押し込まれてしまったウィルバーの薄汚れた姿とは対照的だ。
ふだんは使われていない王城の西の塔に、なぜダドリーが現れたのだろう。そう考えているウィルバーの心をあっさり読んだダドリーは、つまらなそうに応える。
「どうして現れたかって? 憲兵団長さんと話をしたかったからだよ?」
「だからってひとりでこんなところにいらっしゃるなんて、危ないです」
「風の精霊さんが傍にいるから大丈夫だよ。それに、僕は憲兵団長さんがおじいさまを害してないことを知っているから」
にこやかに告げるダドリーに、ウィルバーがハッとする。
「そうだ、伯父上は!」
「生きているよ?」
「……は?」