白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 ウィルバーが不思議そうな顔をすると、ふわりと宙に浮かんだ封筒が、彼の腕の中へ飛び込んできた。きっと、風の精霊が運んできたのだろう。私が食事を運びに行くところを見ていたみたいねとオリヴィアが苦笑を浮かべている。
 その馴染みある封筒は、杏色で。
 ウィルバーの渋い表情が、一気に明るくなる。

「――怪盗アプリコット・ムーンからの、予告状だ!」

 封筒を捕まえて、オリヴィアが見ているにも関わらず中身を確認するウィルバー。
 そしてみるみる顔色を真っ赤に染めていく。

「……なんだって?」

 怒りなのか羞恥なのかわからないウィルバーの反応に、オリヴィアも興味深そうに風の精霊が浮かべる予告状の内容に目を走らせる。
 そこには――……



『親愛なる憲兵団長さま

 花残月の満月の夜に、スプレンデンス王城に侵入したタイタス・スケイルが奪った“烏羽の懐中時計”および囚われのウィルバー・スワンレイク憲兵団長を頂戴いたします。

 怪盗アプリコット・ムーン』



 ――折しも、満月の夜は明日に迫っている。
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