白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
怪盗アプリコット・ムーンと王城の魔術師たちと悪党の誤算

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 タイタス・スケイルは焦っていた。
 計画通りに物事が進んでいれば、今頃自分はリヴラの一族に復讐を終え、スワンレイク王国の国王が変わった後に国を容易く乗っ取れたであろう。
 ところがだ。利用できると思ってちょろまかした烏の一族の家宝“烏羽の懐中時計”はタイタスひとりで魔法をつかうには手に負えない魔法具だった。やはり“愛”などというふざけた媒介要素がないとつかえないらしい。なんと不便なこと。渋々“烏羽の懐中時計”をつかいこなせる魔術師を探すものの、コルブスの一族ですら既に骨董品扱いしているこの魔法具を古代魔術で蘇らせることのできる人間は限られ、古代魔術研究者である第二皇太子ゴドウィンにも匙を投げられてしまった。

 そこでいったん“烏羽の懐中時計”からは離れ、タイタスは先に己が作ったリヴラの秘薬で現国王アイカラスを亡き者にしてしまおうと考えた。姉のオリヴィアを陥れるべく計画を練り、マイケルを通じてゴドウィンに薬を渡したのだ。
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