白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

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 夜。
 空の上にはおおきな赤みがかったまんまるの月が輝いている。

「ローザ、頼んだよ」
「ジェイニーこそ。誤って自白剤飲まないようにしなさいよ」
「オリヴィアさまが解毒剤を持っているからそう心配しなくても大丈夫さ」

 さきほどまで牢に入っていたローザベルはジェイニーと入れ替わり、ジェイニーはマゼンタ色のナイトドレスを着た囚われの怪盗アプリコット・ムーンに、ローザベルはジェイニーが新しく用意してくれた黒装束を纏った怪盗アプリコット・ムーンの戦闘モードへと姿を変えていた。憲兵たちを騙すため、ふたりはささやかな魔法を駆使して準備を整える。

 目覚めたばかりの国王アイカラスの傍で待機しているダドリーには「無理しないでねお姉ちゃん」と心配されてしまったが、いまのローザベルに怖いものなど存在しない。
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