白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
怪盗アプリコット・ムーンと憲兵団長ウィルバーと救国の乙女

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 西の塔の最上部にある小部屋に閉じ込められていたウィルバーは、窓の向こうから見える満月を見てにやりとほくそ笑む。

 ――今宵、怪盗アプリコット・ムーンが俺を攫いに来るらしい。

 けれど、その前に自分はスワンレイク王国の憲兵団長として、自分を閉じ込めている男を捕縛しなくてはいけない。

 空っぽのシチュー皿を見たオリヴィアに扮したタイタスは、何も言わないウィルバーを見て、怪訝そうな表情をしている。
 薬を飲んで無気力になったふりをしていたウィルバーは、タイタスの顔色をうかがうことなく、夢見るように満月を眺めている。
 
「怪盗に、攫われるって、どんな気分だろうなぁ……タイタス・スケイルよ」

 ぎょっとするタイタスを見て、ウィルバーはふい、と顔を背ける。
 そこへ、ひとすじのひかりが舞い降りる。
 
「ごきげんよう、憲兵団長ウィルバー・スワンレイク」
「怪盗アプリコット・ムーン……!」
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