白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 一方の新婦ローザベルも真新しい純白のウェディングドレスを纏い、長い黒髪を白レースのヴェールで隠していた。ブーケの花は新郎とお揃いのアプリコット・ムーンを中心に、可憐な白と薄紫色のラヴェンダーと緑が鮮やかなハーブでまとめられている。あたまには国王陛下から下賜された亡き王妃のティアラ、“ヴィオレットユーニ(六月の紫)”を、両耳には幼馴染ジェイニーが貸してくれた銀水晶のイヤリングを、そして右足首にはウィルバーが市場で見つけてきたという藍玉(アクアマリン)のアンクレットが飾られていた。
 前回着たドレスよりもキラキラして見えるのは、縫い糸に銀糸が入っているからだという。彼女のために仕立てられたドレスを見て、ウィルバーは「やっぱり君は俺の女神だ」と最初の結婚式同様に喜んでいる。

 ローザベルがウィルバーとの結婚式の記憶を消した代償は、もう一度結婚式を行うことだった。それも、前回よりも盛大に、国民を巻き込むような盛大な式を。

 参列者は前回の二倍以上で、国王アイカラスの三人目の息子とまで呼ばれるようになったウィルバーの晴れの舞台を見に来る野次馬の姿もあった。
< 295 / 315 >

この作品をシェア

pagetop