白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 アルヴスの結婚式と異なり、ラーウスの結婚式ではドレスの色が決まっていないそうだ。儀式でどうせすぐに脱いでしまうからだ、という話は耳にしたことがあったが、ここまで露出がひどいとは……
 ウィルバーは思わず彼女の一挙一動に魅入っていた。

 ローザベルもまさか自分の曾祖母がこのような格好で現れるとは思いもよらなかったのだろう、自分とよく似た姿の彼女が儀式に従って恥ずかしそうにガウンを脱ぎ、聖棺のうえにまたがり、夫となるひとからの指示を受ける情景を、顔を真っ赤にしながら見つめている。

「婚儀には、初夜の儀式も含まれていたのですね」
「なんだか、視てはいけないものを視てしまった気がする……」

 聖棺に嵌められていた薄紅色の石に花嫁の姿が照らされ、ひかりの洪水が生まれる。そのまま新郎新婦が身体を重ねると、ふたりの姿はそのひかりに吸い込まれるかのように消えていく。

 彼女がちからある宮廷魔術師となったのは神殿に据えられていた聖棺の巨大な“稀なる石”の守護を得ていたからなのだろう。魔力を扱うだけでなく、その身体に魔力を溜め込めたから、アイーダは誰よりも強い魔術師になれたのだ。
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