白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

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「冗談で言ってるわけじゃないからね。ローザベルお姉ちゃんは古代魔術の知識が豊富で、この国の旧き良きものたちと繋がりを持っている。国民たちは融和政策を喜ぶ。僕と結婚すれば、お姉ちゃんは未来の王妃さまになれるんだよ? ねぇ、怪盗アプリコット・ムーンのお仕事が無事に終わったら、僕の、僕だけの花嫁さんになってよ?」
「……ダドリー」

 猫のように膝の上にしゅるりと滑り込んだダドリーの柔らかな金髪を撫でながら、ローザベルは淋しそうに呟く。

「その気持ちは嬉しいですよ。だけど、わたしにはウィルバーさまがいるの。ウィルバーさまがいいの。ウィルバーさまじゃないとダメなの。だからどうしたって結婚はできないの……たとえ事情があって離縁しても、わたしが捧げる“愛”の魔法は彼を想うことでしか発動することができないから……」
「そうなの? 僕が旦那さんのことを忘れさせてあげても、ダメなの?」
「忘れさせるだなんて悲しいこと言わないで。“愛”の所在がある限りは……たとえ彼に嫌われて一方通行になっても、わたしの気持ちは変えられないでしょう?」
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