白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
憲兵団長ウィルバーと怪盗アプリコット・ムーンの最終決戦

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 憲兵団長ウィルバー・スワンレイクは怪盗アプリコット・ムーンの来襲に備え、いち憲兵に扮した国王アイカラスとともに花の離宮の神殿跡地を散策している。
 アイカラスがジェイニーを影武者に仕立て、現場に張り込むのは今日が初めてのことではない。はじめのうちは危険ですからおやめくださいと咎めていたウィルバーだったが、アプリコット・ムーンの古代魔術に対抗できるアイカラスの隠れた才能……魔術の出所を察知する能力を目の当たりにしてしまったことから、強く拒むことができなくなってしまった。
 ここ最近は気が乗らないと予告状が届いてもそっぽを向いていたくせに、魔力が凝っている花の離宮の神殿跡地という場所が気になったのか、今日のアイカラスは憲兵らしく犯行予告現場を興味深そうに観察している。

 すでに日は落ち、空には夜の帳が降りていた。偶然か必然か、アプリコット・ムーンという品種の薔薇が咲く神殿への入り口は、アイカラスが宰相ジェイニーから預かってきたという光の精霊によって淡く照らし出されている。

「ウィルは精霊を見たことは」
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