図書室の彼の溺愛
「それでは、カップルさんいってらっしゃ~い」
茶化すキャストさんの声も耳を入らないくらい入る前からおびえていた

「ううぅ……柊……」
控えめに柊の服をつかんだ

「大丈夫、作り物だって」
安心させるような声に少しだけ、不安が消えた

「きゃぁゃ…~~~~~!!!」
恨めしや~と、お化け特有の台詞を吐いて出てきたから、悲鳴を上げて後ろへ戻ろうとする

「ダメだって、逆走は怒られるよ!」
そんな私を引き留める柊は突然の私の暴走に困っているようだった

怖くてもう歩けなくてその場に蹲る

「ぅ…………」
怖すぎて涙が出てきた

そういえば……燿に無理矢理連れられたお化け屋敷の時もこんなだったっけ…

「ふっ、意外な欠点、おいで、楓」
ちょっと顔を上げたら、両手を広げた柊

「オワッ」
勢いよく飛び付いたから、少しふらつく

体が宙に浮かんだ気がして慌てる
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