あなたとしゃぼん玉

開かなかった扉

それから1年間は毎月供養に行く為、お寺に仏花とお菓子を持って足を運んだ。
毎日エコー写真に手を合わせた。

みんなが言う、1から人生をやり直している。
何の希望もなくただ何も考えずに毎日をただただ生かされて、生きていた。

25歳になったわたしの誕生日は、わたしが命を絶つ決意をした日になりました。

Instagramの通知音が鳴る。
思わず2度見した。
身体から血の気が引いた。


【NATSUKIがイイネしました】


「…えっ。なんでっ」
わたしのInstagramにある人からイイネが入る。
このとき、嬉しい気持ちはなかった。
気持ち悪い、怖いとだけ思った。

この人は何を考えているんだろう。
何がしたいんだろう。
どういうつもりなの?
分からない。

理由もなくて、意味もなくて行動しているなら、なんて残酷なひとなんやろう。
一気に消していた悲しみが押し寄せてくる。

なんで。
どうして。
そんなことをするの。
何がしたい?

あなたの行動はわたしを苦しめ、狂わせる。

フォローはすぐに外された。
無かったことにしたんだと思った。
怖くなってすぐにアカウントを削除した。
でも、もうわたしが行動する理由が分からない。
なんで、わたしばっかり?
なんで?

会社を辞めたし、一人暮らしも辞めた。
あなたの前からいなくなった。
関わることをやめた。
LINEもブロックしたし、携帯番号も消したし、わたしの携帯番号も変えた。
ここまで行動したのに。
なんで、またぶり返すようなことをするの?

ここまでしたんやから、もうわたしが行動を起こすのは違うよ。
自分で気づいて。
このままじゃあかんって。
やめようって。
自分の意思で決めてほしい。
そう思って、消したアカウントを戻した。


しかし、わたしのこころはこの日から沈むことをやめなかった。
拍車がかかったかのように急速に落ちていく。
こころが黒色によどむ水の中に落とされていく。
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