LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
私が何も言えずに黙っていると、
先程注文していた、ホットコーヒーとアイスコーヒーが運ばれて来た。


「これは俺の一人言ですが、
別に結婚をちらつかせたとかではないのに、
ここまで徹底して、それをなかった事にしなくても、とは思いますよね」


涼しい顔で、滝沢斗希はそのコーヒーのカップを手に取り、口を付けている。

もう話し合いは、終わりだと言うように。


「それ、を、なかった事…」


私と眞山社長との一年間の交際は、
この人に、それ、と言われ。


そのそれは、なかった事になったのだと、知らされた。


今まで、こんな風に人生の中で絶望した事は幾度とある。


むしろ、絶望しかないような、私の半生。


眞山社長の交際は、そんな私にとって初めての幸せだった。



「月に一度程、そうやってホテルで密会して、
周りにそれを隠されて。
その関係が付き合っていると?」


そう言って、滝沢斗希は鼻で笑う。


私は悔しさから、唇を噛み締めていた。


「今一度訊きます、あなたと眞山社長との関係は何ですか?」


その言葉に、私は眞山社長にとって何でもなかったのだと知った。


いや、何処かではそれを気付いていた。


だけど、私はそれに気付かない振りを、ずっとしていた。
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