私は1人じゃない




「だってよ、決定」
「ペアはどうするの?」


七瀬ちゃんが私と蓮のやりとりを不思議そうに見つめながら聞いてくる。


「あーそうだな、まず宮原と桜介だろ」
「たまには朱莉じゃなくて七瀬ちゃんや霧野がいいな〜」


「後でぶっ飛ばすよ」


朱莉の目に炎が宿っているみたいで怖い。


本当にぶっ飛ばされそう。


「柊木、やめて朱莉怒ってる」
「そうだよ、桜介くん、朱莉ちゃんがカノジョさんなんだから大切に〜!」


「はいはい、仕方がないな〜」


なんて言っているけど、朱莉と組めて嬉しそうにデレデレしている。


柊木、全く隠せてない。


朱莉と柊木は先に行った。


遠くに行った2人を見つけると、手を繋いでいた。


やっぱりこの2人はお似合い。


「俺は杏衣と行く」


そう言うと思った。


もうため息出ちゃうよ。


「えー、僕、蓮と行きたいんだけど」
「おいお前」


たまに凌はファインプレーを起こす。


「だってさ、だから私は七瀬ちゃんと行く………」


チラッと七瀬ちゃんの顔を見ると悲しそうな顔をしている。


七瀬ちゃんは、凌と行きたいんだ。


好きだもんね、凌のこと。


だとすると私は蓮と行かなきゃいけないことになる。


どうするどうする。


七瀬ちゃんは凌に可愛く見られたくて好きになって欲しくて七瀬ちゃんなりに頑張っているのに、私が邪魔するわけにはいかない。


ここは蓮のためじゃない、七瀬ちゃんのため。


「私、蓮と行くから、凌は七瀬ちゃんと行って」
「えーなんで、もしかして霧野ちゃん、蓮のこと……」


「違う、200パーセントありえない、凌、七瀬ちゃんとあまり話したことないでしょ、この機会に仲良くなったら?」
「凌、そういうことだ」


「分かった〜、2人の邪魔は出来ないしね〜〜」
「これで決まりな」


そう言うことじゃない、七瀬ちゃんのためだよ。


凌に目で訴えたけど、凌と目が合っていないから無意味。


「杏衣ちゃん、ありがとう」


小声で私の耳元でお礼をする七瀬ちゃん。


「ううん、頑張ってね」


七瀬ちゃんは巻いた髪をふわふわさせて凌のところに行った。


「杏衣、行くぞ」


私は逃げたいと思った。
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