私は1人じゃない
「あんたバカ?」
「………え?」
「和藤先生は梨沙子先生なんか眼中にないの、杏衣しか見えてないのになんで引いちゃうの!?」
「どうしてそんなことわかるの?」
「もし梨沙子先生のことを少しでも思っていたら杏衣を家に泊らせないし、実際授業中チラチラ杏衣のこと見てたよ」
「そうなんだ…」
「杏衣が引く必要ないんだよ」
「でももう家を出て行ったし、それにもう嫌いまで言っちゃったし……」
「はぁ………」
「杏衣ちゃーん」
2人は頭が下がっている。
「それでなんで蓮くんの家に?」
「私が家を出て行ったことをたまたま知ってそれで泊まらせてもらってる」
「なんで私の家じゃなくて水樹なの!」
「ごめん、朱莉に迷惑かけたくなくて…」
「あんた、友達でしょ、いや親友に頼らない選択肢なんてないよ?」
「私の家でもいいのに!可愛い人形たくさんあるよ!」
「ありがとう、朱莉、七瀬ちゃん」
「杏衣、水樹の家に泊まるってことどういうことか分かってる?」
「う、うん、なんとなく……」
「それ分かってないね」
「いや、分かるよ……」
前からずっと蓮の気持ちは分かるし、蓮が勇斗さんとと暮らして出て行ったことも知られたんだから……
本当に気持ちをきっちり整理しなきゃいけない。
「杏衣は和藤先生のこと好きなの?」
「好きだけど、辛い」
「それは梨沙子先生のせい?」
「それもそうだけど、勇斗さんは先生で、私は生徒。先生相手でも好きになっちゃいけないってわけではないと思うけど、なんか越えちゃいけないところまで超えた気がして辛い……」
「そっか……水樹のことは?」
「蓮は最初はちゃらくてムカつく部分多かったけど優しいし、いい人なのかなって思うし、今は私のこと好きなんだろうなって分かるけど、今は勇斗さんのことで精一杯で……」
「なんだかんだ水樹、杏衣のこと思ってるよね、猛アタックしててわかりやすいんだっつーの」
「蓮くんは杏衣ちゃんが大好きなんだ!」
「好き」でいいじゃん、なんで「大好き」って言うのかなぁ。
「七瀬ちゃん、静かにね」
「ごめんなさーい」
「杏衣、どうすんの、ずっと水樹の家に泊まるの?」
「しばらくはね」