私は1人じゃない



「勇斗さん、どういうことですか?」
「アハハ、説明しようか」


勇斗さんが帰ってきてすぐに問いただすように聞く。


テストが終わってから、朱莉に聞いたところによると、



私の高校は、普通科、商業科、スポーツ特進科の3つの科があってそれぞれ3クラスある。


それで、商業科の2年5組の副担任になったらしい。


かっこいいけど懐きやすくて、で女子がたかってるんだよねと興味なさげに言っていた。


「まず言うけど、南高に就職が決まったのは杏衣ちゃんと出会う3日前でたまたま杏衣ちゃんと同じ高校だったから偶然。」
「そうなんだ、」



私は本当にびっくりして取り調べみたいな雰囲気を出しているつもりなのにずっと笑ってる勇斗さん。



「それで初出勤の時に杏衣ちゃんがこの高校にいるってことを知って、杏衣ちゃんが気付くまで黙っておこうかな〜と思った」


笑いながら言われると怖い。


「杏衣ちゃんを騙そうとしてるわけではないよ、ただ驚かせようと思っただけ」
「本当にびっくりした」


「ごめんごめん、あー面白い」


人をびっくりさせて面白いなんて悪趣味なんじゃ?


そんなに苦しいって言うまで笑うことかな??


「ごめん、もう笑わないから、許してね」
「じゃもう笑うのやめてください」


「はい、止まった、でも、杏衣ちゃんに教えた部分がテストに出てたでしょ?」



そう言われれば、テストの7割は教えてもらったところだった。


教師としてやっていいことか分からないけど、ちょっとした罪滅ぼしなのかな。


「許してもらえる?」
「……うん」


「杏衣ちゃん、ありがとう」


勇斗さんは、イジワルな人。
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