【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


「紅音!」

「爽太さん……!」

 仕事を早く終えた爽太さんと待ち合わせをした夕方16時半すぎ。爽太さんはわたしを見て慌てて駆け寄ってきた。

「すまない。遅くなってしまった」

「いえ、大丈夫です」

 初めてデートとした時の緊張感みたいなものが、いつもある。

「さ、行こうか」

「はい」

 爽太さんはいつも、どこかに行く時には必ず手を繋いでくれる。夫婦なら当たり前のことだけれど、それがいつも嬉しく感じるのは、なぜなのだろうか……。
 夫婦だからこそ、わたしたちはこうして夫婦らしいことを出来るのは嬉しい。

「紅音、今日メイク変えた?」

「え、分かりますか……?」

 確かにいつもよりもメイクを少し変えた。デートということもあり、アイメイクを少し濃いめにしたのだけれど……。
 まさか気付いてくれるとは思ってなかった。

「もちろん。そのメイクも可愛いよ」

「……ありがとう、ございます」

 【可愛い】と言われると、それこそちょっと照れるけど、やはり嬉しい。

「紅音、今日は過ごしやすいな」

「そうですね……。過ごしやすいです」
< 12 / 208 >

この作品をシェア

pagetop