【完結】わたしたち、離婚を前提の期間限定夫婦になります。


 手を繋ぎながらこうして歩くのは、なんだかそれだけでも幸せに感じる。

「爽太さんの手……温かいです」

「そうか?」

 この温もりは、ずっと忘れたくない。……そう思ってしまう。

「紅音、どうした?」

「……いえ、何でもありません」

 爽太さんとわたしは、たった2年間という期限付きの夫婦だ。それでもわたしは、この2年間を大切にしたい。
 例え2年間だとしても、わたしはその2年間を爽太さんと夫婦でいられたことを誇りに思うだろう。

「紅音、今日はバイキングに行こうか」

「バイキング……?」

 バイキングか……。バイキングなんて、1回だけしか行ったことないな……。
 それもいつ行ったかなんて覚えていない。

「ああ。加古川からもらったんだよ、バイキングのチケットをね」

「あの、加古川先生から……?」

 救命医の加古川先生……。もう名前を覚えちゃった。

「ああ。本当は奥さんと行くはずだったんだけど、奥さんが妊娠中でつわりがひどいみたいでさ。行けないからってくれたんだ。しかも期限、今日までなんだよ」

「そ、そうだったんですね……」 
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