鬼は妻を狂おしく愛す
「んんっ…んーんん……あ…あ……ふぁ…」

その日屋敷に帰り、ベッドに直行した二人。
美来は雅空に、貪るように抱かれていた。
美来はいつも抱かれている時、自分がどんな声が出ているかわからない不安で口を塞ぐ。

その手を雅空は優しく外し、ゆっくり美来に語りかけるように言うのだ。
「もっと声聞かせて?
普段は美来の声聞けないから、俺に抱かれてる時は感じるままに可愛い声聞かせてね」
と…………

とにかく不安でしかたがない、雅空。
いくら女性だけの食事でも、他の男性客に声をかけられるのではないか。
連れ去られるのではないか、と命の危険より美来が自分から離れてしまうのではないかとそっちの心配ばかりするのだ。

正直、あまり美来の命の危険は心配していない。
美来が鬼頭組・若頭の雅空の女と知れ渡っていることは、逆に言うと鬼に金棒のようなものだ。
雅空の女に手を出す人間……いや、雅空の怒りを買う人間はこの世にいないと言っていい程、雅空は恐れられているからだ。

仕事に行く少し前まで美来を抱いて簡単にシャワーを浴び、ベッドにぐったりしている美来にまた深いキスをして出ていったのだった。


次の日(亜希達に会う当日)、犬飼と出ていこうとする美来を、動けないように抱き締める雅空。
「美来の友達、消しちゃおうかな。
美来には、俺しかいなくなるように。
そしたら、こんな思いしなくて済むよな」
美来が聞こえないことをいいことに、恐ろしいことを言い出す雅空。

「若、もう時間です」
犬飼の呼びかけに、しかたなく腕を緩めた雅空だった。
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