鬼は妻を狂おしく愛す
【お願いがあるの】
雅空の服を少し引っ張って、美来が見上げた。
「何?」
【もう少し、亜希達とお話したい】
「うーん」
雅空は宙を見上げ少し考えて、美来に向き直った。

「もう今日は、美来と離れたくない」
「………」
俯く、美来。
すると雅空は、美来の頬を両手で包み込んで上を向かせた。
「じゃあ、家に来てもらえば?
俺も傍にいるけど、それでもいいならいいよ」

「………」
美来はその言葉に、少し疑問をもった。
そう言ってくれるのは、とても嬉しい。
でもあの屋敷には、雅空と美来と一部の部下しか入れない“聖域”だと雅空に言われたのだ。

美来の友人だから、許可してくれたのだろうか。

【いいの?】
屋敷に向かう車内で、いつものように身体ごと雅空が美来の方に向いている。
亜希達は別の車で移動中だ。
美来を愛おしそうに見ている雅空に、美来が伝えた。
「何?」
【家には、限られた人しか入れないって言ってたから】
「あー美来、勘違いしてる。
俺達の屋敷には連れて行かないよ」
「………??」
キョトンとしている美来。
「美来、可愛い…」
そう言って、美来の口唇を奪い貪った雅空だった。

そして着いたのは、高級はタワマンだった。
「スゴッ…!!」
亜希達が、感心して見上げている。
【ここは?】
美来が雅空に聞く。
「うーん。俺の家?
実は俺達の屋敷の方が、別荘だったんだ」

美来も来るのが、初めてなタワマン。
そこの最上階へ行く。
広すぎる部屋に大きな窓。
そこに大きなソファがポツンとひとつ置いてあったのだ。
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