鬼は妻を狂おしく愛す

｢美来は俺と一緒になるはずだったんだ｣

｢でも、浮気したんだろ？｣
｢え？
何でもお見通しかよ……！？｣
｢お見通しだよ？
美来のこと傷つけた奴が、よくそんなこと言えたな！｣
｢うるせーよ、ヤクザ野郎……｣

｢話は終わったから、帰っていいよ｣

謙吾はドアを開けようとして一度振り返った。
｢あ、知ってる？
美来が一番喜ぶキスの仕方｣
｢は？｣
その言葉に、雅空が視線だけ謙吾に向けた。

｢聞きたい？｣
｢聞きたいけど、いい。本人に聞く｣
｢教えてくんないよ？
きっと、恥ずかしがって言わないと思う｣
｢………｣
雅空の何とも言えない表情。

｢フッ…！！
イカれたヤクザでも、そんな顔すんだなぁ～
チョー貴重な光景！！
ウケる～～(笑)｣
｢………｣

｢まぁ、教えるつもりねぇけど！俺“だけ”の秘密！！｣

その瞬間だった━━━━━
ガン━━━━━━！！！！
謙吾が気づくと、ドアに両肩を押しつけられていた。

｢教えてよ、お兄さん……｣
ギリギリまで謙吾に顔を近づけ、囁くように言った雅空。
｢何…だよ…！？お前…いつの間に……｣
｢まぁいいか…それは、無理やりでも聞くから。
でもさぁ、俺…言ったよな……！？
ここ！から美来の存在を消せって｣
雅空は謙吾の頭を、指でトントンと指しながら言った。

｢大切なじじぃがどうなってもいいの？
あーそうか！どうなってもいいから、そんな意地悪言うんだね？｣
｢お前…そんなわけ……｣
｢奥田～！
コイツ、じじぃのこといらないって！｣

｢は？冗談だろ！？｣