鬼は妻を狂おしく愛す
屋敷に帰りついた雅空。
そのまま風呂場に直行し、全身を洗い流して美来の元に向かう。

雅空にひときしり抱き締められ、キス責めされて美来は脱衣所に向かいスーツを取りに行く。
ジャケットを掴み上げると、ほのかに香水の香りがする。

「………」
妖子の香水はオーダーメイドなので、その特殊な香りに美来はドクンと心臓が鳴ったのを感じた。

あ…あのママさんの香り。
今日、クラブに行ったんだ。
でも、仕事だもんね。変な意味はない、ない!!
自分自身に言い聞かせた。

そしてクローゼットに移動しようとすると、ポトッと何か落ちた。
広い上げ“それ”を見て、美来は今度は頭が熱くなった。
“それ”は、ラブホテルのマッチだった━━━━━

その場にへたりこむ、美来。
ふと、またジャケットに目がいく。

そして更に、メッセージカードがポケットに入っていた。

《雅空様へ
今日はありがとうございました。
貴方に抱かれていた時間、私は今まで生きてて一番の幸せな時間でした。
貴方の色っぽい声、熱い舌、優しい手………
慈しむような貴方の愛撫に心が震えました。
きっと、奥様には毎日こんな風に抱いていらっしゃるんでしょうね。
あ、でも……
貴方の色っぽい声だけは、私だけのものですよね?
妖子》

もちろんこれは、妖子の悪戯。
全くのハッタリだ。
でも、こんな物を見て疑うなと言うのは無理がある。

「はぁはぁはぁはぁ……」
息が上手くできない。
泣き叫びたいのに、それもできない。
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