最低なのに恋をした
「こんな時はパァッと飲みに行こう」
涙を堪えて下を向いて黙ってしまった私に、唯さんがこれでもかというくらいの元気な声で飲みに誘う。
ゆっくり顔を上げ唯さんの顔を見ると、唯さんの目が赤く充血しており無理やり笑顔をつくろうとしているのがわかる。
「はい、ありがとうございます。とても飲みたい気分です」
唯さんは私より10cmくらい背が低いので私が見下ろす形になる。
フンワリした雰囲気だが、仕事ができる姉御肌。
私はいかにも「仕事ができます」という雰囲気、らしい。
身長は165cm、目は大きいと言われるが奥二重でどちらかというと冷ややかに見えるらしい。
そう、全然フンワリしていない。
見た目に反して特別仕事ができるわけではない。
唯さんとは真逆なのだ。
そんな私をいつも可愛がってくれる大好きな先輩。本当に感謝だ。
「よし、行こう」
唯さんが身支度を整え更衣室のドアをあける。
「はい」
私はそれに続く。
今夜は1人でいたくない。
明日は土曜日、仕事は休みだ。
思いっきり飲もう、やけ酒だ。
心の中で息巻いた。
「美月、私そろそろ帰るね」
時計を見ると深夜0時を過ぎていた。
目の前のグラスをユラユラ揺らしながら少し考える。
「唯さん、彼氏のお迎えですかー?」
唯さんは既に立ち上がり、私の頭をなでる。
「そうなの、彼もこの辺りで飲んでたみたいで」
「大丈夫ですよー!兄の家に泊まります」
チラッとカウンターにいる店員に視線を向ける。
店員は眉を下げ困った顔をこちらに向ける。
「唯ちゃん、ありがとう。美月の事は任せてもらって大丈夫」
その店員はここの店のオーナーで私の7歳年上の兄だ。
唯さんと飲む時は決まって2軒目は兄のお店だ。
私の実家は小規模ではあるが飲食店を経営しており、その一つがこのバーなのだ。
どんなに酔っても兄が面倒見てくれる。
歳が離れているため、兄は私に甘いし私も素直に甘えられる。彼女的には厄介な存在だろうなと思っているが、なかなか変えられない。
ブブブっと唯さんの手の中のスマートフォンが鳴った。チラッと画面を見た唯さんの口元がほんの少し緩む。
彼からだな、とその表情からすぐわかる。
「それじゃあ、彼氏が表に着いたって」
「唯さーん、今日はありがとうございました。あんな奴、忘れました」
「美月は可愛い。絶対あんな男よりいい男に出会えるから」
唯さんがギュッと私を包み込む。
フワッとフローラル系の香りがほのかに感じられる。飲みの後でもいい匂い。コレがモテる女なのかな。
だいぶ酔った頭で考える。
「唯さん、いー匂い。なんで?」
唯さんの体が私から離れる。
「美月、オジサン発言しないの」
唯さんは少し呆れ顔になりながらも、また私の頭をポンと叩いてお店を出て行った。
「お兄ちゃん、私もいい匂いさせてたらフラレれなかったのかな」
目の前のグラスをユラユラさせながら目の前にいるであろう兄に話しかける。
「そうだな」
適当な兄の言葉にムッとする。
「私、いい匂いじゃないの?」
私はちょっと喧嘩腰にくってかかる。
「美月は香水つけてないだろ。お前は飲み過ぎだ。後1時間で店閉めるから大人しくしてろ」
兄は大きな溜息をつきながら私の目の前にグラスを置いた。
涙を堪えて下を向いて黙ってしまった私に、唯さんがこれでもかというくらいの元気な声で飲みに誘う。
ゆっくり顔を上げ唯さんの顔を見ると、唯さんの目が赤く充血しており無理やり笑顔をつくろうとしているのがわかる。
「はい、ありがとうございます。とても飲みたい気分です」
唯さんは私より10cmくらい背が低いので私が見下ろす形になる。
フンワリした雰囲気だが、仕事ができる姉御肌。
私はいかにも「仕事ができます」という雰囲気、らしい。
身長は165cm、目は大きいと言われるが奥二重でどちらかというと冷ややかに見えるらしい。
そう、全然フンワリしていない。
見た目に反して特別仕事ができるわけではない。
唯さんとは真逆なのだ。
そんな私をいつも可愛がってくれる大好きな先輩。本当に感謝だ。
「よし、行こう」
唯さんが身支度を整え更衣室のドアをあける。
「はい」
私はそれに続く。
今夜は1人でいたくない。
明日は土曜日、仕事は休みだ。
思いっきり飲もう、やけ酒だ。
心の中で息巻いた。
「美月、私そろそろ帰るね」
時計を見ると深夜0時を過ぎていた。
目の前のグラスをユラユラ揺らしながら少し考える。
「唯さん、彼氏のお迎えですかー?」
唯さんは既に立ち上がり、私の頭をなでる。
「そうなの、彼もこの辺りで飲んでたみたいで」
「大丈夫ですよー!兄の家に泊まります」
チラッとカウンターにいる店員に視線を向ける。
店員は眉を下げ困った顔をこちらに向ける。
「唯ちゃん、ありがとう。美月の事は任せてもらって大丈夫」
その店員はここの店のオーナーで私の7歳年上の兄だ。
唯さんと飲む時は決まって2軒目は兄のお店だ。
私の実家は小規模ではあるが飲食店を経営しており、その一つがこのバーなのだ。
どんなに酔っても兄が面倒見てくれる。
歳が離れているため、兄は私に甘いし私も素直に甘えられる。彼女的には厄介な存在だろうなと思っているが、なかなか変えられない。
ブブブっと唯さんの手の中のスマートフォンが鳴った。チラッと画面を見た唯さんの口元がほんの少し緩む。
彼からだな、とその表情からすぐわかる。
「それじゃあ、彼氏が表に着いたって」
「唯さーん、今日はありがとうございました。あんな奴、忘れました」
「美月は可愛い。絶対あんな男よりいい男に出会えるから」
唯さんがギュッと私を包み込む。
フワッとフローラル系の香りがほのかに感じられる。飲みの後でもいい匂い。コレがモテる女なのかな。
だいぶ酔った頭で考える。
「唯さん、いー匂い。なんで?」
唯さんの体が私から離れる。
「美月、オジサン発言しないの」
唯さんは少し呆れ顔になりながらも、また私の頭をポンと叩いてお店を出て行った。
「お兄ちゃん、私もいい匂いさせてたらフラレれなかったのかな」
目の前のグラスをユラユラさせながら目の前にいるであろう兄に話しかける。
「そうだな」
適当な兄の言葉にムッとする。
「私、いい匂いじゃないの?」
私はちょっと喧嘩腰にくってかかる。
「美月は香水つけてないだろ。お前は飲み過ぎだ。後1時間で店閉めるから大人しくしてろ」
兄は大きな溜息をつきながら私の目の前にグラスを置いた。