天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~


佐知の実家は九州だし、そこへ帰ったことは考えにくい。
とりあえず人事部に電話をし、佐知から直接連絡を受けた人間を探すことにした。
その人物はすぐに見つかり、電話の向こうで何も知らない彼女は、佐知から聞いた話を俺にする。

『昨夜階段から落ちてひどい捻挫をしたようです。昨日は救急に行ったそうで、今日小野田病院の外来に来るようにと言われたからと』
それを聞いた瞬間俺は無意識に口を開いていた。

「俺も有休にしておいてくれ」

『え? 和泉部長? 理由は』
その問いに受話器を投げつけるような勢いで、俺はすぐにフロアから走り出した。
そんな俺を物珍しそうに、驚いたように社内の人間がみるのなんてかまっていられない。
大切な妻がけがをしたのだ。そう大切な妻。いつのまにかとっくに俺は佐知のことを妻だと思っていたことに気づく。

どれだけ俺ってバカなんだよ。

過去にとらわれて大切なものを無くすわけにはいかない。
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